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「……」
手にはどこぞの雑貨屋さんの看板クマミニサイズが。
続きから、奮闘記です。
勝手に某方が出演しています。すみません。
不都合がありそうでしたら迅速にひっこめます。
店番がバルじゃなければ、まだ。
そう思ってくぐった扉の向こう、
視線を向けてきたのはやっぱり店主その人で。
そもそも誰か別の奴に店を任せるのなんて
めったにないことなんじゃ、と気づいて、覚悟を決めた。
きめた、と思う。
ダルクを渡せばいいだけ。
聞かれはしないと思うけど妹への土産とか何とか言えば、
……。
ぐ。
不自然に固まっていたようで、声をかけられる。
いや、その前にあいさつを交わしたような気がする。
なんだかよく覚えていないけれど。
(なるべく自然な感じで、こう、なんともない風にだな)
通りすがりにひとつ武器飾りを手にとって
ダルクとともにカウンターに出そうと、棚の前をすり抜けた。
その時。
ひとつだけすくいあげる予定だった手が
いくつかのクマをひっかけて、床へとばらまいた。
「~~~!」
声にならない悲鳴をあげたような、気がする。
焦る一方でから回る俺を、宥めているのか笑っているのか。
拾うのを手伝おうと寄ってきた、その声に顔が上げられなかった。
と。
眼前に滑りこんでくる、小さな姿。
促されるままに手を出して、それを受け取る。
ほとんど顔も見ずに買い取ろうとしていた、そのクマを。
改めて見ると、小さいのにしっかりとした作りをしていて
クマのぬいぐるみなんて数あれども、きちんとあのクマの特徴をつかんでいた。
いい出来だろうと聞かれれば、頷くしかないくらいに。
俺は落としたことをいいわけに
ひとつ貰うと口にして、代わりにその手のひらにダルクを乗せた。
…落としてごめんと、言えただろうか。
ようやく顔をあげてみれば、いつも通りに笑う顔がそこにはあって。
少し待つように言われ、カウンターの裏に下がるのを見守っていると
一枚の紙を手に戻ってきた。
ぽかんとしたまま差し出された券を受け取り
説明を聞いたら、なんだか少し笑えた。
律義なのか、商売上手なのか。
次はこれでコーヒーを貰うことにする。
そう告げて、その日は雑貨屋を後にした。
限定商品と聞いたもので。
絶対買えないだろうなと思っていましたが、誘惑に負けたみたいです。
(店を出る姿を見送り)
…(緩く笑みを浮かべ)…彼も損な性格だ。
それが良い事なのか。それとも勿体無い事なのか。
実際の所、俺はどちらでもいい。
気に入ってもらえたなら、それでいい。
アレは特に、彼と彼にとって掛け替えの無い遊び相手
その双方に一等喜んで欲しかった。
俺は君達にとって大切な「モノ」を一つでも
見つける兆しを、渡せただろうか。
しばらく考えた末に、ベッドのそばに置いた。
なんだか疲れた。
一人でバタバタとしていた所為ではあるけれども。
手から離して安堵したと同時に襲ってきた疲労感に
誘われるようにして倒れこんだ。
安い作りのベッドが、軋んで音を立てる。
ごろりと寝がえりをうってうつ伏せになった視線の先に
鎮座する先ほどのクマ。
「…」
まともに見たのは、今日二度目。
くるりとまるいつぶらな瞳で、ちょこんと座っている。
顔の下に組んだ腕を少しだけ伸ばして、その頭をつついてみた。
「……」
なんだか撫でているようで落ち着かず、少しだけ力を込める。
こてり。
クマは転がった。
誰も見ていないのに思わず目をそらしてしまったのはなぜなのか。
誤魔化すように転がって、天井を仰ぐ。
「あ」
腕の下に違和感。
そっと持ちあげると、案の定、先ほど転がしたクマがいた。
結局、添い寝が叶わなかったクマは
荷物の裏にそっと忍ばせられ、今も彼と行動を共にしている。